日本経済再活性化に必要な視点

1990年のバブル崩壊とアジア経済危機以降、日本経済は後退を余儀なくされてきている。確かに日本政府は数回にわたり経済刺激策を導入し、包括的投資や莫大な資金投入を試みた。しかしながらそうした努力にもかかわらず結果は期待外れなものとなり、国家財政は深刻化し、日本経済のデフレ状態が長期化している。さらに円高は進行しており、日本経済に大きな負担となっている。

日本経済の衰退は最新のビジネスデータからも読み取れる。主要産業、例えば電子、光学、情報技術分野は競争相手国である中国、韓国、台湾に遅れをとっており、一部の産業では赤字経営に陥っている。しかし、こうした経済的困難を日本経済の奇跡の終焉の兆しと捉えることは時期尚早だ。とはいえ、日本企業は変化している世界の意味するもの、さらにはそこでの自らの正しい位置づけを行うべきであろう。そして、国家による支援はもはや期待できないことを肝に銘じるべきだ。緊縮財政そして財政再建は政治的最優先政策となっており、福島原発事故によるエネルギー問題への持続可能な解決には大規模な財政措置が必要となっているからだ。

こうした状況下、日本国内市場からは新たな刺激を期待することは出来なくなっている。日本市場はその規模のピークに達しており、低金利政策は財政赤字の影響をある程度和らげるのに役立っているのかもしれないが、一方で、日本国民の購買意欲を抑制している。貯蓄傾向は依然として健在であるが、家計の利子所得の不在により購買力不足が存在している。加えて、低出生率と制限的な移民政策は人口の減少をもたらし始めている。

こうした中、日本にとっての成長の将来は世界市場での事業活動次第ということになろう。そしてそこでは市場アクセスの向上が日本企業にとっての鍵となろう。ここで日本企業にとっての挑戦は、市場規制ルールということとなる。世界貿易自由化と自由な市場アクセスの担い手としてのWTOの役割は低下している。二国間自由貿易協定と地域経済連携がWTOの多角間貿易交渉に取って代わられつつある。ごく最近になって日本も地域貿易協定締結に積極的な姿勢を示し始めており、近隣アジア諸国、米国を含む環太平洋諸国、そしてEUとの間でも交渉開始に向けた動きが見られるが、交渉の日程や協定の内容等は依然として不確実な状況下にある。

過去数十年間にわたって日本企業が発展途上国に大規模な投資を行い、そしてそうした諸国は70年代、80年代の日本経済の成功物語から多くを学んだ という事実は軽視されるべきではないだろう。しかしながら日本企業は、技術的な要求水準が高く革新的なOECD 諸国市場へのアクセスと協力の強化が必要だ。

現在、ユーロ圏の危機について多く語られている。現実には、EUは将来にわたってとりわけ日本企業にとって力強く安定した経済パートナーであり続けるであろう。EUは国境を超えた経済活動と地域協力に豊富な経験を持っている。そうした意味でも、日本企業にとっては欧州の動向を予知し、これまで以上にEUと協力関係を築く時期といえる。EUとの貿易に長い経験を持つ企業でさえ、ブリュッセルにおける動向さらには決定に驚かされることがたびたび起きている。時間をかけて適切な準備さえしていれば避けることができた深刻な損失を、日本企業が蒙りかねない時代となっている。加盟国の対外貿易をコントロールする諸機関を有するEU内の意思決定プロセスが非常に複雑であるからこそ、そうした準備はより必要となってきている。

EUの構造と機能メカニズムの正しい知識を持つことが重要だが、それだけでは十分とは言えない。EU法令は、EUで事業活動を行っているか否かにかかわらず、日本企業に何らかの影響力をもたらしている。競争、消費者保護、知的財産に関する法令、基準認証、税法、環境規制、「欧州横断ネットワーク」の建設等に関するEU立法は、日本企業のEUでのビジネス活動にとりわけ重要な影響を与えている。 

このように欧州のビジネスを取り巻く政治的環境は急激に変化しており、そうした中で成功を収めたい日本企業は、EUレベルのアプローチと自らの利益を必要に応じて代表してくれるネットワークを必要としているのだ。重要なことは、27に及ぶEU加盟国と5億人の人口との政治的相互作用の中で己の声を表明し、聞いてもらうことである。EU内での意思決定プロセスは一段と複雑化している。このことは2009年のリスボン条約発効により、EUの意思決定手続きはより複雑となり、同時に経済対策における規則の導入はほぼ排他的にブリュッセルへ移行したことから、従来にも増して言えることだ。

一方EUにおける政策策定プロセスは開かれたものであることに注視すべきである。タイムリーに自社の考えを表明し、さらにEU立法の意思決定手続きに建設的に参加することが必要となっている。そうした企業は近い将来何が待っているのかを把握し、また自社利益をより立法当事者に表明しさらには聞き入れてもらうことが出来ることとなる。日本企業は、今やこうした政策決定ノウハウに長けた専門家の助けなしにはEUでの成功はもはや困難になってきていることを知るべきである。そうした専門家は、企業のEUの意思決定プロセスに関する知識を深め、企業が遭遇する問題をEUレベルでの文脈で対応することを可能とさせ、よって欧州横断的な単一市場という枠組みでの事業活動を可能とさせる。

これまで日本企業は、その製品の品質、イノベーション能力、そして商品価値に頼ってきた。これらは確かに世界的競争の中で中心的役割を果たし続け、これからも日本が持つ重要な資産となることは明らかである。しかしながら、一国の将来がこれまで以上に外国市場への自由なアクセスに依存する時代にあって、現代の企業は世の中で最も豊かな市場で起きていることをより広い視野で把握する能力により、成長の潜在性を向上させる必要があるのだ。そのためには、自ら進んで自社利益を世界規模での意思決定プロセスに表明する意思の能力を養うことだ。EUはそのための良い条件を提供していることに、日本企業は注視すべきであろう。


このテキストは25. 10/ 2012 ,06:30.時 に公表され、そしてファイル日本経済再生の必要性.に保存されます。

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